8系統に分類されたネコ科動物
ネコ科の系統分岐の後半でも解説しましたが、DNA塩基配列の比較で決定された、8系統37種のネコ科動物を紹介します。
調べられたDNAはX染色体とY染色体、母から子へと伝わるミトコンドリアで、30種類の遺伝子のDNA塩基配列に注目(ネコ種1つにつき合計で2万2789この塩基対に相当する)、これらの配列のうち半分近くが種ごとに異なっていたので、どのグループとどのグループが親類関係にあるか、どのグループがもっとも古いかが判明しました。
次に、猫の化石の年代を放射性炭素を使って決定、ミッシングリンクにあたると考えられていたいくつかの化石(大型のネコやオオヤマネコ、オセロットといった系統の直近の共通祖先の化石)から、系統樹の16の枝分かれの時期が確実に分かっています。
①ヒョウの仲間
- ライオン Panthera leo
- ヒョウ Panthera pardus
- ジャガー Panthera onca
- トラ Panthera tigris
- ユキヒョウ Panthera uncia
- ウンピョウ Neofelis nebulosa
- ボルネオウンピョウ Neofelis diardi
中型から大型のネコ(15~350㎏)で、生息地の生態系で食物連鎖音頂点に君臨しています。
ライオンやトラ、ジャガー、ヒョウ、ユキヒョウは舌骨が完全に骨化していないので吠えることができ、ウンピョウとボルネオウンピョウの2種は吠えることができません。
②ボルネオヤマネコの仲間
- アジアゴールデンキャット Pardofelis temmincki
- ボルネオヤマネコ Pardofelis badia
- マーブルドキャット Pardofelis marmorata
小型から中型のネコ(2~16㎏)で東南アジアの熱帯雨林のみに生息、詳しいことはほとんどわかっていません。
③カラカルの仲間
- カラカル Caracal caracal
- アフリカゴ-ルデンキャット Caracal aurata
- サーバル Caracal serval
中型のネコ(5~25㎏)で、アフリカの実に生息しています。
④オセロットの仲間
- ジョフロイネコ Leopardus geoffroyi
- コドコド Leopardus guigna
- タイガーキャット Leopardus tigrinus
- アンデスネコ Leopardus jacobita
- パンパスキャット Leopardus colocolo
- マーゲイ Leopardus wiedii
- オセロット Leopardus pardalis
小型から中型のネコ(1.5~16㎏)で、中央・南アメリカ全体に広く生息している。
他のネコ科動物の染色体が38本のなか、このグループの染色体は36本しかありません。
⑤オオヤマネコの仲間
- スペインオオヤマネコ Lynx pardina
- ユーラシアオオヤマネコ Lynx lynx
- カナダオオヤマネコ Lynx canadensis
- ボブキャット Lynx rufus
中型のネコ(6~20キログラム)で、北アメリカとユーラシアの温帯地域に生息。
短い尾ととがった耳が特徴で、主に野ウサギを捕食する傾向があります。
⑥ピューマの仲間
- ピューマ Puma concolor
- ジャガランディ Puma yaguarondi
- チーター Acinonyx jubatus
小型のジャガランディ(3~10㎏)から大型のチーター(21~65㎏)までと多様。
北アメリカで進化したのち広く4つの大陸に分散したため、「更新世の絶滅」を生き残りました。
⑦ベンガルヤマネコの仲間
- ベンガルヤマネコ Prionailurus bengalensis
- スナドリネコ Prionailurus viverrina
- マレーヤマネコ Prionailurus planiceps
- サビイロネコ Prionailurus rubiginosus
- マヌルネコ Otocolobus manul
小型のネコ(2~12㎏)で、マングローブの林からモンゴルの草原まで、広くアジアに生息しています。
⑧イエネコの仲間
- イエネコ Felis catus
- ヤマネコ Felis silvestris
- スナネコ Felis margarita
- クロアシネコ Felis nigripes
- ジャングルキャット Felis chaus
小型のネコ(1~10㎏)でアフリカとユーラシアに生息、イエネコについては世界中のいたるところに6億頭もいます。
百獣の王ライオンの個体数が3万頭を切っているなか、イエネコは人間に寄り添うことで大繁栄を築いたと言えるでしょう