キプロスの猫

キプロスの猫

エジプトの猫像
Rama [CC BY-SA 3.0 fr], via Wikimedia Commons

約9,500年前のイエネコ

2001年、地中海にあるキプロス島のシルロカンボスにある新旧石器時代の村野遺跡で、一番古いと思われるイエネコの骨が発見されました。

この猫は、約9,500年前に生きていたと推測され、4,000年前のエジプトで最初のイエネコの歴史的記録が現れるもっと以前のものでした。

人間と一緒に埋葬

猫の骨は無傷で、時間と手間をかけ墓に埋葬されていたのです。

さらに、猫が横たわっていたのは、人間の骨から40センチ足らずの位置、その墓からは磨製石器や石英の斧、黄土色の顔料も一緒に見つかっていて、高位の人間であることを示していました。

猫は成猫ではなく、1歳足らずで死んだと推測、死因は不明です。

ただし、当時の犬の埋葬とは違い、猫と人間の体が触れ合うようには配置されていなかったので、犬ほど大切に扱われていなかったのかもしれません。

とはいえ、猫が何らかの糸をもって埋葬されたという事実は、墓の中の人物か残った親戚が、猫を高く評価していたことを示しています。

同時に、この時期に猫がペットになっていればのちの時代にも同じような埋葬が行われると見るべきなのですが、その後何千年ものちまで猫の埋葬の記録が全く出てきません。

そうなると、キプロスの猫の埋葬は例外だった可能性があり、ペットとして猫が広く明確に飼われるのは、やはりエジプトまで時代が進むのを待つことになりそうです。

ペットとして埋葬された猫

なお、6,500年前のエジプトでのある街に作られた工匠の墓には、ガゼルと猫の骨が収められていました。

ガゼルはおそらく工匠に死後の食べものを提供するために置かれたもの、猫はおそらく彼のペットだったと思われます。

4,000年前の墓には、17匹もの猫の骨が入っていて、その傍らにはミルクが入っていたらしい小皿がたくさん並んでいました。

1か所にこれほど多数の猫を埋葬した理由は不明ですが、食べ物の皿とともに埋葬されたことからペットだったと思われます。

人間に連れられキプロス島へ

ところでキプロス島は、海抜が最低レベルの時でも本土とつながったことはなく、人間が1万2,000年前に船で島へ渡った時に、意図的に運ばれたと思われます。

当時の船はかなり小さく、偶然猫が乗るにしては目立ちすぎ、密航することはできませんでした。

キプロス島へ移住した人たちは、食べ物がネズミに荒らされることに悩まされたので、ネズミを駆除するためにあとから猫を連れて行ったと推測されます。

このネズミ=イエネズミは、およそ100万年前に北インドにいた野生種が期限でした。そこから東と西の両方へ広がっていき、肥沃な三日月地帯に到達すると初期の穀物倉庫に住み着いたと思われます。

イスラエルでは、穀物倉庫で1万1,000年前のネズミの歯が、シリアではネズミの頭をかたどって掘られた9,500年前の石のペンダントが発見されています。

当時、ヤマネコを捕獲し飼いならすことは、すでに東地中海では確立されていたようで、クレタ島、サルディニア島、マヨルカ島などでも飼いならされた猫がいた証拠が見つかっています。


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